後期クイーン問題入門


◇はじめに 
自分で言うのも何ですが、なんか小難しそうなタイトルですねー。、でも、内容はタイトルとは違い、結構適当です。適当に読んじゃってください。読んでも意味不明だったらすいません。多分、原因は僕の説明不足or認識不足です。

◇  そもそも後期クイーン問題とは何ぞや?
「後期クイーン問題」とは、95年に法月綸太郎が『現代思想1995年2月号』に発表した『初期クイーン論』で提示された本格推理小説が抱える重大な問題のことです。
肝心の中身ですが面倒なので、簡潔に説明します。「論理的にたどりついた結論が、 真実かどうかは作中探偵には絶対にわからない」ということです。なぜなら、読者へは「読者への挑戦状」で、現在読者に提示されている情報が「すべてのデータ」であり 、「論理的にたどりついた結果が唯一無二の真実」と示せるからです。それに対して、探偵は「論理的にたどり着いた結論」が「唯一無二の真実」だとは絶対にわかりません。なぜなら、探偵は現在保有しているデータが推理に必要なすべてのデータだとはわからないからです。
なんか話が難しくなってきたので(これでも簡略化しているのですが…)、具体例を出します。
探偵Pは証拠A、証拠B、証拠Cという三つの証拠をもとに結論Xを導き出したとします。しかし、真実は証拠Cは犯人がわざと残した「偽の手がかかり」でした。ということは探偵が論理的にたどり着いた結論は間違えだった、ということになります。
つまり、この場合だと証拠Cは犯人が残した「偽の手がかかり」であるということを証明する証拠C´が必要となります。しかし、証拠C´の存在すら探偵はわからない。ましてや、証拠C´も犯人が残した「偽の手がかかり」だと証明する証拠C´´が存在するかもしれない…、また別の証拠Dが…、C´´´が…。こうやって、際限なく推理の元になるデータが増える可能性をいくらでも含んでいるわけです。
これを防ぐためには探偵に「現在保有しているデータ」が「真相を導き出す推理に必要な全てのデータ」である、という情報を提供しなければなりません。読者に対しては、それは基本的に「読者への挑戦状」という形で行われます。それに対して、探偵にそれを示す方法は…ありません。従って、探偵は論理的に唯一無二の真相にたどり着くことができない、という壊滅的な結論に達します。これが俗に言われる「後期クイーン問題」です。

◇  実作例
ネタバレ注意! この章は氷川透『最後から二番目の真実』の真相をかすめています。未読の方で勘のいい方は真相に気づく可能性がありますので、読まないでください。「絶対にそんな無名作家の無名作品なんぞ読まん」という方は読んでいただいて結構です。
この後期クイーン問題が提示された95年以降、日本の新本格推理小説はこの後期クイーン問題をどう扱うか、というのが一つのテーマになってきました。その中で後期クイーン問題が持つ問題が最も現われているのが氷川透『最後から二番目の真実』(講談社ノベルス,2001)だと思うので、紹介します。
『最後から二番目の真実』を元も子もない要約をしてしまえば、大学構内で女子大生と警備員が殺された事件を推理する話です。この小説には語り手である氷川透と女子大生・祐天寺美帆という二人の探偵が出てきます。物語の終盤で語られる祐天寺の推理は、警察とコネクションのある氷川のみが持っている証拠によって崩されてしまいます。まさに祐天寺が「自分の持っているデータ」を「全てのデータ」だとわからなかった故に起きてしまったミスであり、推理自体には何の問題性もない。まさに、「後期クイーン問題」を実作に応用した作品だといえます。
 
◇  解決策
この「後期クイーン問題」が提出されたあと、新本格の作品では次々と様々な解決策が実作内で提示されるようになっていきます。
*解決策1・メタレベル
一番わかりやすいやり方は、小説界より上のメタレベルから小説世界に介入する、という方法です。清涼院流水の中でよく言われるメタ探偵(九十九十九とか)とは、こういう上位メタレベルからの介入により真実を悟る探偵のこと、だと思うのですが…。
*  解決策2・超能力
超能力によって、何らかの証拠(絶対に確実な証拠である)を得て、それを元に推理することによって、「後期クイーン問題」を回避しようとする方法です。主な作品は霧舎巧「あかずの扉」シリーズなど。この部分に関しては諸岡卓真氏の「九〇年代本格ミステリの延命策」(ミステリーズ! vol.03 WINTER 2003)に詳しい。また、この諸岡氏により、この回避方法の限界が示されています。
*  解決策3・偶然
詳しくは不明。山口雅也『奇遇』内で提示されたとか…、残念ながら未読です。
◇  あとがき
じつはこの評論にもならない駄文は、僕が入っているミステリ研の機関紙に出したのをほぼそのまま転載しただけです。すいません。実際の冊子では表紙にcriticismと銘打たれていて恥ずかしかった…けっしてそんな立派なものでないのは、ここまで読まれた方はおわかりだと思います。が、一応ミステリ関係でもあるのでここであげておきます。
 また「後期クイーン問題」でよく議論される〈閉じた論理体系〉〈ゲーデルの不完全性定理〉〈後期クイーンの作品〉等にはまったく触れていませんが、それは自分の実力不足です(「ゲーデルの不完全性定理」なんて意味不明ですし)。その他、認識の間違え等があるかもしれませんが、それも実力不足です、すいません。

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