「キャリー」 S・キング 新潮文庫 65点

狂信的な母親に育てられたキャリーは、仲間達のイジメを受け、極度に追い詰められ…ついに、TK(テレキネシス)が発動!「モダンホラーの帝王」のデビュー作。

モダンホラーは面白い!だけど、(当然ながら)あんまり恐くない

実に、久しぶりの海外物でした。どうも、最近は国内物に偏っていたんで…。で、何故か読了したのが(多分)世界で一番売れている作家・スティーブン・キング。っていうか、ミステリじゃないじゃん!

で、感想は面白いです!さすが、スティーブン・キング。デビュー作からここまで完成されていたとは!特に、キャリーがクイーンに選ばれて豚の血を掛けられるところの臨場感は一級品。三人称視点で、すでにキャリーが嵌められていることを知っている読者は、いつそれがキャリーの身におそいかかるか…これがアメリカのサスペンスって奴?
ただ、後半はスーパーナチュラルに飛躍するので結構興醒め…するのは私だけでしょうかね。そんなことはともかく、モダンホラーの面白さを再確認できました。恩田陸『六番目の小夜子』が好きな人なんかには、結構オススメできるんじゃないんでしょうか。

で、今読んでいるのは「乱歩全集1 屋根裏の散歩者」(光文社文庫)です。乱歩全集を一巻だけ読んで、乱歩を片付けようという何ともあくどい(?)試みです。新潮の『江戸川乱歩傑作選』にするか迷ったんですが、せっかく光文社文庫が乱歩全集を出しているので、ついつい…値段は全集の方が500円ぐらい高いんですが(笑)。

『逆さに咲いた薔薇』 氷川透 42点

は!?これが、本当に氷川透の作品!?嘘でしょ

う…。個人的には、氷川透は好きな作家ですし、これまでも高く評価してきましたが…うーん、この作品で悩んでしまった。
だって、これ全然氷川透らしくない。猟奇殺人事件が見立て殺人、それに女性刑事に謎の安楽椅子探偵を加えただけ。あれだけ色々やって見せた氷川が、何も仕掛けてないのだ。勿論、私が気付かなかっただけ、という意見は当然ですけど…。少なくとも、私が関与できるレベルではない、ということは必然的にファンはやめざるおえない、というわけですから…。
『各務原氏の逆説』はまあまあ(50点ぐらい)だったんだけど…、氷川透シリーズを書いて欲しいですね。正直言って、次の新刊を無条件に買うつもりはありません。

『成吉思汗の秘密』 高木彬光 52点

歴史ミステリの秀作。でも、意外性という点では高い点はあげれない

はい、大変面白く読ませてもらいました。神津恭介と井村教授との戦いなんて見ものですね。歴史ミステリというと、ついついマンネリになりがちなんですけど、そう言う対決や人間模様などで読者を退屈させないようにしていたのは、正直感心しました。これだけ、古い作品なのにそういう事まで考えているとは…。
ただ、悪い目で見れば凡作。ベッド・ディテクティブで歴史の謎を解く、というのは作中でも出てきたとおり、ジョセフィン・テイ『時の娘』を意識しているのでしょうが、何せインパクトには欠ける。ジンギスカン=義経説なんて、今の時代興味をもてる人がいるとは思えないんですが。

『依存』 西澤保彦 85点

う…もう、感動の嵐。愛、束縛、依存そして論理のカルテット。もっと、評価されて然るべき作品

まさか、こうもいきなり80点を出すとは…。でも、評価基準から言わせれば文句なしの80点台なんだよなあ…。
さて、それはともかく感想。前作「スコッチ・ゲーム」が「タカチ自身の事件」とすれば「依存」は「タック自身の事件」。そして、『仔羊たちの聖夜』『スコッチ・ゲーム』『依存』の三部作のテーマはズバリ「愛と束縛」、そして本格ミステリ。
「本格ミステリ=人間が書けていない」なんて方程式を作ったのが誰か知りませんが、その人に是非ともいいたい。これを読め、と。勿論、キャラ萌え云々を議論したいわけではないですけど。
いきなり自論を展開して申し訳ないですが、私は「推理小説」とは、「推理」のある「小説」だと捉えています。従って、「推理」部分が駄目だと「推理小説の傑作」ではないし、「小説」部分が駄目だと私は「推理小説の傑作」と認めていない(そう言う時は、ミステリという言葉を使う・笑)。恩田陸や東野圭吾は前者だし、綾辻行人『十角館の殺人』は典型的な後者だと考えています。天下の『十角館』でさえそうなのだから、今まで私が認めてきた「推理小説の傑作」というのは数少ないわけです。唯一の例外は加納朋子『魔法飛行』なんですが、ここにそれをさらに凌駕する一作が登場した、と思っています。それが、言うまでも無く『依存』です(褒めすぎ?いえいえ、相応の評価です)。
だって、ラストなんてもう感動物…これまで、ずっとシリーズを読んでいたからこそえられる感動ともいえます。さらには、ウサコという四人の中ではいままで一番マイナーだった存在を視点人物に置く事で、「タックの物語」であると同時に「ウサコの物語」でもあります。解説の人の表現を借りさせていただくと、タカチを『華』とすれば、『花』に過ぎなかったウサコ。そのウサコにも、悩みがあり過去がある。その当然の出来事に気付かされ、ウサコという人格が確立されていくし、当事者である二人以外の普通人であるウサコに視点人物の役割を与えるのにも意味があるわけです(解説参照のこと)。これを、小説の傑作と呼ばずになんと呼ぶ。
そして、「推理」の部分。作中で描かれる細々した「謎のエピソード」。その一つ一つが魅力的であり、それを論理的にとかれているのも魅力的。そして、そのサイドエピソードは「愛と束縛」のテーマの下で語られ、すべてはラストに帰結する。これを、本格ミステリの傑作と呼ばずになんと呼ぶ?

『麦酒の家の冒険』 西澤保彦 講談社文庫 61点
タックシリーズの第二作目。時系列的には(時系列上の)第一作『彼女が死んだ夜』と繋がっている。

山の中をさまよった挙句、ようやくたどり着いた家には家財道具は何も無い。が、よく見ると二階の冷蔵庫の中には96本のヱビスビールが…!?
4人はヱビスビールを飲みながら、この不可解な現象を推理していくうちに…。

安楽椅子探偵物の傑作。でも、長編だと厳しい?

どうですか、皆さん?惹かれません?謎の96本のヱビスビール。何故、そんなものがここにあるのかを、件のヱビスビールを飲みながら四人が推理合戦をする…うーん、でも短編ならいいんですよ。謎も魅力的だし。
でも長編でやるとやはりちょっと厳しい。
何せ、長編なのに場面移動がほとんどないわけですし、延々と冒頭から推理し続けるというのは…その意気込みは買いますが、ずっと読まされると食傷気味。ま、キャラ萌えキャラを導入してその場を凌ぐよりかは、ましか(ひょっとして、ウサコってキャラ萌えキャラなんでしょうか?・笑)

余談ながら、この本の解説は恩田陸。お返しに、という意味なのかは知りませんが、恩田陸『象と耳鳴り』の解説は西澤保彦。この『象と耳鳴り』という短編集のなかに「9マイル〜」にオマージュを捧げた作品として『待合室の冒険』という短編が…。おそらく、この作品を意識しているみたいです。


『仔羊たちの聖夜』 西澤保彦 角川文庫 64点

昨年のイブの日。タック達三人は飛び降り自殺に居合わせた。その自殺者が持っていたプレゼントがボアン先輩の荷物に紛れ込み、今頃出てきた?
その送り主を捜す為、タカチとタックが動くが…。

実は重いテーマ。タカチの気持ちがわかる…

中身は、一見普通のパズラーなんですよね。その動機は…意外と重い。次の『スコッチ・ゲーム』を読んだ後だから言えるのかもしれませんが、高校時代のタカチと合わせて読むとかなり重いテーマなんですよね…。
ミステリとしても、相変わらず論理は一級品。何故、自殺したかまで解き明かして…、その解明途中で見せたタカチの思わぬ一面にシリーズを読んできた人間としては、思わずひきこまれます。いや、本当にオススメの一冊です。ちなみに、今回はタカチが探偵役で、タックは振り回されるんですが、微妙な所で大貢献するんですけどね。

なお、再び余談。この本の解説は光原百合。有栖川有栖『孤島パズル』の解説で江神部長へのファンレターを書いた光原百合は、今回もキャラ萌えぶりを発揮。ただし、今度はボアン先輩らしいです。あれれ?タックじゃないんだ…。ともかく、キャラ萌え解説はやめなさいって、大人なんだから。

『スコッチ・ゲーム』 西澤保彦 角川文庫 72点

タカチが高校の頃。タカチが高校の寮でルームメイトで同時に恋人であった恵が殺された。それから、二年…今度はタックは真相を指摘する事になる。

パズラー的には前2作が上。でも、この小説の重みはただじゃない。

いきなり、私事ながら、実はタックシリーズを始めて読んだのはアンソロジーでなんです。そのあと、『解体諸因』『彼女が死んだ夜』を読んで…あとはずっとほったらかしだったんです。それが、何で今頃再び読み始めたか、というと『スコッチ・ゲーム』と『依存』が面白い、という風の噂を聞いたからなんです。そして、ようやくたどり着いた『スコッチ・ゲーム』。全く、期待を裏切りませんでした(いい意味で裏切った、といってもいいぐらい)。
西澤保彦というと、「お馬鹿なパズラー」(c綾辻行人)と思っている人がいるかもしれませんが、是非ともこの本を読んでその認識を変えてもらいたいですね。

タカチがレズという話は何度も聞いたし、タカチに高校時代共学だったにも関わらず女性の恋人がいた、というのは今までのシリーズで知っていました。
そのタカチの高校時代の物語がコレ。今までは、基本的には(まあ、第一作や第3作は関係者だけど)他人の事件を扱ってきた四人組。なのに、今回はタカチ自身の事件…。それも中身が、目茶苦茶ヘビィなんですよ。恋人が殺されて、単なる痴情のもつれに転がりそうなところを、全くその方向には行かない。この作品のテーマはその方向じゃないし、それを作者自身自覚して書いている。いや、これほど面白いし、論理性もあるのに、重いミステリがあるのか…と正直驚きました。
いや、これ以上、ネタバレなしには語れそうにないですが、完璧な「本格ミステリ」でありながら完璧な「小説」である作品は久しぶりでした。

でも、本当に次の『依存』が楽しみです。これは、まだ買ってもないので来週となりそうですが。
ちなみに、来週は氷川透『逆さに咲いた薔薇』、高木彬光『成吉思汗の秘密』、西澤保彦『依存』の読了を予想してます。高木彬光は半分ぐらいすでに読み終わってます。氷川透は待望の新刊。今回の探偵役は…祐天寺美帆!?マジですか…。

『きみとぼくの壊れた世界』 西尾維新 講談社ノベルス

独創的なキャラクターだけじゃない。実は、本格。裏には、テーマ

いや、正直に言わせて貰えば一行目から笑ってしまった。シスコンの櫃内様刻くんにその妹・夜月。様刻の友人・箱彦にその幼馴染・りりす。さらには、保健室の住人・病院坂黒猫。いやー、相変わらず凄まじいネーミングセンスと独特なキャラクター造詣はお見事。「もんだい編」のストーリーなんてドリーム小説(作者の夢を体現化したような小説)なんだけど、キャラクターとユーモアで読ませる力を持っている(この西尾作品に限らないが)。
ところが一転、「たいてい編」になると普通のミステリになる。まあ、病院坂が飛び降りたりと、いろいろな事があるとは言え、ミステリ的には従来作品と比べても大差はない。問題は、裏のテーマ。タイトルからして従来ミステリへの挑戦なのだ(二階堂黎人が西尾維新などを狭い世界しかかけていないと批判した上で「キミとボク」小説と名付けたこと)。作中に横溢する数々の従来ミステリ作品ネタをいれつつも、新時代ミステリへの新しい一歩を従来ミステリ側に示した作品なのかもしれない。
ちなみに個人的に一番感心したのは、作中で出てきた病院坂黒猫。まあ、横溝正史から名前を頂いたみたいだが、性格は御手洗潔系。御手洗を模倣したような探偵が新本格に横溢したが、これほどまでも御手洗に近づいたのは(御手洗本人も含め)、多分これが初めてかと。西尾維新のキャラクター造詣の素晴らしさを再確認しました。

『かめくん』 北野勇作 徳間デュアル文庫

さっぱり、意味不明でした

日本SF大賞をも取った作品ですが、さっぱり意味不明。SFファンってこんな小説を読んで楽しめるの?と問いたい気分で一杯でした。いや、我が不遜の至りといわれれば、そうなんですが。ともかく、最初から最後まで意味不明でした。

『美濃牛』 殊能将之 講談社ノベルス・文庫

まさに、現代の横溝的本格。

自慢ではないが、私は横溝はさっぱり読んだ事がない。別段、土俗のことなんて興味も惹かれないんですよね。そんな田舎の話を聞くぐらいなら、現代風の何となく格好いい系のクライムノベルを読んでた方がマシ、とまではいいませんが、そんな感じで今まで横溝なんぞさっぱり読んでいません。
そんな私的なことはさておき、『ハサミ男』という現代風でスタイリッシュ(←あんまり意味わかってません・笑)なミステリでデビューした殊能将之が、横溝的本格を書くとどうなるか…を体現したような小説。「リゾート開発」という現代風で都会的な内容で味付けをしながらも、横溝作品のパッチワーク的(←最近、流行らしいです、この言葉)な作品。ミステリの味気なさに若干文句をいいたいが、素晴らしい秀作ということは確かだと思います。

『黒い仏』 殊能将之 講談社ノベルス・文庫

ミステリ界いや、ファンへの最大の挑戦状という名の裏切り

先週五冊読んだうちで、最大の問題作はダントツでコレ。
↓ネタバレはしてませんが、未読の方に先入観を持たせないため反転↓
純粋な面白さ(要するにユーモア)なら『きみとぼく〜』が一番面白かったし、ミステリ的には『美濃牛』が良かったし、ストーリーなら次の『鉄塔 武蔵野線』が一番面白かった。でも、今週の最大の問題作&裏切り&壁投げ本はコレ。
まさか殊能将之がこんな作品をモノにするとは意外以外(←洒落ではない)いいようがない。これと同じストーリーを佐藤友哉が書いたところで誰も怒らなかったでしょう。
しかし、殊能将之が『ハサミ男』『美濃牛』の2作で(勝手に読者が)培ってきた「エレガントで端正な本格ミステリを書く作家」というイメージを、根こそぎ破壊していまったのだ。
私は、比較的に作家に勝手に期待するタイプである。例えば、佐藤友哉が『月光ゲーム』レベルの端正な本格を書いたとすれば、(たとえ、どんなに出来が良くても)壁に投げるでしょう。その逆も然りで、綾辻行人が西尾維新みたいな作品を書いたら、今度の新刊(『暗黒館の殺人』のこと・笑)は買わないでしょう。そう言う意味で、『黒い仏』には端正な本格を期待していた…が見事に裏切られた(私の場合は悪い意味で)。「作家は読者を裏切る必要性がある」(c加納朋子)なのかもしれないが、3作目で正反対の方向にいくとは…。
気分的にはエラリー・クイーン『レーン最後の事件』を読み終わったあとみたいな…(笑)。
ちなみに、この作品は私の地元・福岡が舞台ということで、細かい所をチェックしてみましたが(笑)、素晴らしいぐらいちゃんと取材をしています。
若田部とかニエベスとかラジオ(いずれも元ダイエー)とか久しぶりにききましたよ。
未読の方へ→あと、この作品の真価はシリーズごとに読むことで発揮されますので、ネタバレはありませんが『ハサミ男』、『美濃牛』はちゃんと読むように。

『鉄塔 武蔵野線』 銀林みのる 新潮社

ありがちな少年小説。でも、辿っていくものが…鉄塔!?

ストーリーは説明するのは簡単。S・キング『スタンド・バイ・ミー』の粗筋を読めばいいんですよ、そのままです。ただ、辿っていくものが…鉄塔なんです。
皆さん、送電用の鉄塔って注目したことあります?私はありませんし、多くの人がそうでしょう。せいぜい、鉄塔が注目を浴びるのは電磁波問題で送電線直下の住民が云々とか、その程度だと思います。その鉄塔に惹かれる少年が、近くにある鉄塔に掛かっている看板「武蔵野線 77−1」を見て、一号機を探すという、普通の人は絶対に思いも付かないストーリー。いや、着想点でけでも素晴らしい(何?作者が鉄塔マニアだっただけ?そうかも)。
鉄塔を一々人間に例える所(男性型&女性型とか)に、子供らしさを感じる事も出来ますし、一号機は原子力発電所だと信じ込む所も子供らしい。まさに、鉄塔という特殊な物を描きながらも、完璧な少年小説が出来てる。いや、素晴らしいですね。
ところで、この小説、どうも文章が…というところがあります。まあ、日本ファンタジーノベル大賞の特徴なのかもしれませんが、わざとこういう形式を取っているのだと思います。だから、もし興味をもたれたら我慢して読んでみてください。
まあ、もっともこの本が手に入るかがまず問題ですが(笑)。

「葬列」 小川勝己 角川文庫

横溝賞を受賞した作品です。ちなみに、私自身横溝賞受賞作品を読んだのはこの作品が初めてです。柴田よしきは短編しか読んだことないし、「本格的ミステリ」(名前なんだっけ?鳥飼何とか)の人は読んだ事ないし。

粗筋だけで言えばアクションノワール。だけど、素人っぽさがよい

そう、単なる粗筋を説明しようとしたらアクションノワール(っていう表現あるの?)しかならないんですが、単なるクライムノベルでないところがこの作品のいい所。ストーリーをざっと説明するとラブホテルのフロントで働く冴えない中年女・明日美。弱気で使えないヤクザ・木島史郎。塩水と借金に固められた中年女・しのぶ。そして天涯孤独な女・渚。この四人が出会って金を奪う為に、銃で人殺しをしまくる小説です。
これを聞いた人は『OUT』+戸梶圭太と思った人がいるかもしれませんが、トカジは入ってません。何せ、そこは銃器を扱うのが素人。人は無駄に死にますが、トカジみたいにグログロ描写は出てきませんのでご安心を。
銃器を扱うのが素人であるからこそ、色々とんでもないことがあって面白い。わざわざ、公安警察を舞台にしたり、ヤクザ映画みたいにしなくても、アクションノベルが書けるという新たな証明をした作品であり、日常とアクションというかけ離れていながら没落していく四人を描いた小説(要は『OUT』的部分)としても傑作だと思います。

「夏のロケット」 川端裕人 文春文庫

これは横溝賞に対し、今は無きサントリーミステリー大賞の優秀賞に選べれた作品。先ほどと同様で、サンミス系の作品を読んだのは初めてです。

中間小説としてはものすごく面白い!でも、ミステリには甘すぎる。

私自身は別のところから「ミステリ要素は限りなく希薄」という話を聞いていたので、最初から中間小説と思って読み始めたからいいですけど、ミステリと思って読み始めると多分失敗しますね…。本当に、何でサンミスに応募したのかな…?
ストーリーは、かつての高校時代にロケット製作を志した主人公たちが、ミサイル製造者と警察から疑われながらも、再会しロケットを打ち上げるというもの。
随所に謎は散りばめられているのだが、解決するのが早すぎて、全く面白みが無い。本当にミステリ仕立てにしたいなら、もう少し工夫の仕方があったはず。ミステリ的には最低(というか謎が勿体無い)に近い。
ただ、小説としては面白いの一言に尽きる。高校の頃天文部ロケット班の5人が17回打ち上げて十七回失敗したリベンジを果たす為、財力を技術を情報を仕入れて自分たちでロケットを打ち上げよう、というこの無謀さが素晴らしい。かつての天文少年(自分もそうだったのはココだけの話)の夢ですよ、本当に。長年、H2ロケット(H2Aも失敗しましたね)やM5の失敗を見てきた人間としては、まさに夢を体現化したような小説です。
そして、圧巻がロケットの科学的説明。SFの中には科学知識をダラダラと書き連ねながら(自慢しながら、でもOK)、書く小説も多いですが、これは懇切丁寧に説明してあり文系人間としては大変助かりました。変な数値を振り回さずに、一言原因は「共鳴」などで終わらせてしまうところに、作者の「読者への意識」を窺わせましたし、その分わかりやすかったですね。そう言う点では、文系人間にもオススメ。
ミステリ要素の弱さを指摘したものの、サスペンス感はミステリ顔負け。いや、本音を言えばもう少し工夫してくれればもっと面白かったのでは?と思うんですけどね。
あと、これのストーリーをみて「文部省推薦図書」にありそうなくさい話(灰谷健二郎とかねじめ正一)と思った人。それは、間違いです。確かに、ストーリー的にはそうなりそうですが、過激派、資金難、警察などがこの話を単なる「文部省推薦図書」に終わらせていません。ただ、この「夏のロケット」つー題名はどうからんか、と思うんですけどね(まるで「文部省推薦図書」のようなタイトル・笑)。

※文部省推薦図書…これはKeiの独自の表現で、やたらと話(特に終わり方)が倫理的かつ道徳的な話を指します。主に、灰谷健次郎とかねじめ正一とかの青春小説を指します。あと、石田衣良もちょっとこの系あり。
例をあげると、灰谷健次郎『島物語』でわざわざ主人公が震災のあった街に行ったり、ねじめ正一『青春ぐんぐん書店』でわざわざ主人公が大した必然も無く(少なくとも、私にはそう見える)地元の店を継いだりすることをさします。


『マルドゥック・スクランブル』 冲方丁 ハヤカワ文庫JA 全三巻

昨年、「SFが読みたい」で一位に、日本SF大賞までとったという今、一番SF界で当たっている本です(ミステリでいう『葉桜〜』みたいなもんですね)

ストーリーは希薄。だけど、カジノシーンが目茶苦茶面白い

一般小説読んでいる人には馴染みの無い名前と思いますが、ライトノベルデビューの作家です。まあ、そのせいなのか良く知りませんが、ストーリー性はやや希薄(ついでに、駄洒落も多い)。「少女と敵と武器についての物語」というキャッチフレーズ通りの展開です。正直、アクションシーンはSF過ぎてわかりにくすぎたし、そこまで感心はしませんでしたが。
でも、この小説で圧巻はやはりカジノシーン。スロット、ポーカー、ルーレット、そしてブラックジャックと続くんですが、(スロット以外は)ものすごい心理戦。本当に、一挙一動見逃せない本当に素晴らしい出来だと思います。特に、ブラックジャックのディーラーとの対決の心理戦は圧巻ですよ。一見の価値があります。というか、これ調べるの大変だっただろうなあ…という気持ちもありますけどね(笑)
SFを碌に読んでない発言なのでアテにならないかもしれませんが、SF的にも「楽園」のシーンとかが新鮮でした。特に、トゥイードルディとトゥイードルディムとか。
読んだ後からみたら、表紙の絵も意外と味があるなあ…って、デザインは寺田克也かよ!意外にあとがきで感心したのは「『少女』という概念が近代のものであるということをわかった上で、『武器』というのを出した」という点。そこまでの思慮深い作品とは思わなかったなあ…。

『バルタザールの遍歴』 佐藤亜紀 文春文庫

第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作です。一部では同賞の最高傑作とも言われているみたいですが…。

外国が舞台。日本人が書いて完璧に成功した数少ない小説

普段、エンタメ(それもミステリばかり)しか読まない人間なので、自信は無いのですが少々文学的に語ろうと思います(というか、それ以外感想書きようが無い)。
二十世紀初頭、オーストリアの貴族に生まれた奇妙な双子・メルヒオールとバルタザール。その双子は、精神は二つなのに、肉体は一つ。第一次世界大戦に敗れたオーストリア=ハンガリー帝国は崩壊し、ハプスブルグ家とその周りの貴族は落ちぶれ、亡命した。時代は過ぎ、ナチスの色が濃くなる中。そんな状況の中、二人はフランスでウィーンで放蕩の限りを尽くす。そして、チューリッヒ、北アフリカと放蕩の旅を続け…。
というストーリーです。このストーリーを読んでチェーホフ『桜の園』を思い出した愚か物が、ここに一名おります。正直、没落貴族云々はロシアの作家達が散々書いてくれたわけで、今更…と文学の大して詳しくない私は思ったわけです。ところが、この小説が素晴らしいのは時代考証が本当に素晴らしい。没落貴族の生活なんか本人たちしかわからない(ロシアの作家たちは本人達でしたから)。なのに佐藤亜紀はここまでリアリティを持って書けた、というのに驚きです。本当に前半部の概略ストーリーだけ見れば、大した事は無い。陳腐なメロドラマ程度に感じられるかもしれない。なのに、読み出すと妙なリアリティを持って読者の目に浮かぶんですね、これは素晴らしいの一言。
そして、圧巻はやはり放蕩シーン。没落→旅に→放蕩と徐々にシーンは転落していく。ウィーン→チューリッヒ→ハーウィアと場所の移動とともに、二人はどん底まで落ちる。そこから、また立ち上がってくる…。ココの所も、完全に考えぬかれた小説。いや、素晴らしい。
結局、本書のテーマ何なのか。敢えて触れないで起きたい。作中で、主人公が触れていないように。

こんなところですかね。最後、格好つけてみましたが嘘です。本当はわかっていません。ネット書評を見ると「精神の貴族性を取り戻す小説」や「(ファンタジーという枠を使った)現実の虚構性」という意見まで様々でした。個人的な意見は「現実の虚構性」を追求していたという意見に近いです。ファンタジーという枠を使ったという関係性の否定的ですが。

『推理小説作法』 土屋隆夫 創元ライブラリ

微妙に推理小説の勉強をしてみました。結構、役に立つ事が多くて、やっと新作が書けそうかな…と思っています。特に、プロット構成のところが役にたちそうです。少なくとも、若桜木虔『プロ作家養成塾』よりは参考になりそうだった(笑)。

この本の最後に土屋隆夫自身のエッセイが記してあるんですが、酔っ払いの戯言として、こんなのが紹介さていました。

「名前だけで通用するのは一流。姓と名前を続けて呼ばれるのが二流」だとか。
苗字だけで呼ばれるのは、何流なのか是非とも聞きたい(1.5流かな・笑)。
やはり、漱石や鴎外、啄木、藤村なども下の名前だけで通用していますから、一流なんでしょうね(太宰と芥川はどうなる?)。
推理小説だと、やはり乱歩ぐらいでしょうね。正史よりも横溝の方が通りがいいし。鮎哲も島荘も姓名続けているから二流…。
しかし、アリスこと有栖川有栖は一流だったのか…。

「冷たい校舎の時は止まる(中)」 辻村深月

ご存知の通り第31回メフィスト賞受賞作。さすがに、そろそろ下巻が出そうだったので、慌てて買った一冊。

予想不可能な展開。だけど、『蛇行〜』や『上と外』には敵わない?

なんて、大人げがないんでしょうかね。またまた、プロ作家と新人作家を比べちゃって…。でも、やっぱり比べてしまいますよ、こんなに似てるんだもん。最近、浅倉卓弥『四日間の奇蹟』が東野圭吾『秘密』のパクリ(?)で話題になりましたけど、作品的に優劣の付け難いこの二者に対し、『冷たい〜』だと恩田陸『六番目の小夜子』には勝てない気が…。
そんなことはともかく、(中)の終わりでとんでもない事をしてしまい、全く先の読めない展開にしてしまいました。最初から、分冊になるなどとは予想してなかったでしょうから、仕方ないといえば仕方ないんですが、どうも次に読みたい、と思わせるような所がイマイチ…(ここのところは、恩田陸『蛇行する川のほとり』が抜群に上手い)。
かなり、ホラー的な展開になってきてるので、一体下巻が「ホラー」に転がるのか、「ミステリ」になるのかが気にはなりますが…。
文章力もまだまだだし、リーダビリティもまだまだ。これから、課題は多そうですが、数少ない1980年代生まれのエンターテインメント作家として頑張って欲しいです。


『冷たい校舎の時は止まる(下)』 辻村深月(←辻は正確には綾辻行人の辻)

予想外に素晴らしいエピソードにラスト。脱帽です。

いや、正直こんな展開を見せてくれるとは思いもしませんでしたよ、本当に。
正直、「上」を読んだときは、「恩田陸へのリスペクト(オマージュ?)べったりの自己満足小説」程度にしか考えてなかったですから。表紙も北見隆だったし、分冊だったし。この日記でも、恩田陸と対比して批判的な感想を書いています。
が、こんな展開を見せてくれるとは…。今では、かなり好印象ですね。伏線が見え見えなのが欠点といえば欠点だが、ミステリとしてもなかなかのもの。ミステリ的には新たな技法は使われてませんが、従来からある常識的なトリック(いわゆる伏線を張って云々って奴。密室とかアリバイトリックをさすわけではありませんので、念のため)をうまく利用した作品だと思います。
伏線についての文句と並んでもう一つ、文句をつけるならば、やっぱり心理描写がもう少し欲しいというところでしょうか。一人一人が素晴らしいエピソード (菅原のエピソードなんて感動物ですよ)を持っているんだから、もっと深く心理に踏み込んだら、もっと面白い作品が出来たんじゃないかな、と思います。
まあ、随所に恩田陸の影響があるのは相変わらずですが(一人一人に過去のエピソードとか。男女混合版『ネバーランド』?)、個人的には恩田陸ファンなので良しとしましょう。まあ、恩田陸が嫌いな人(登場人物が綺麗過ぎる、だの少女漫画趣味だのラストが中途半端だの)は駄目かな。
「上」「中」では散々文句を言ってきた作品ですが、「下」で認識を変えました。いやー、次の作品が(ノベルスならね)出たら是非とも買いたいですね。

『バガージマヌパナス』 池上永一

この読みづらいタイトルは、琉球方言で「我が島の話」という意味だとか。大賞がなかなかでない事で有名な第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作です。

ファンタジーノベル大賞は逸材が隠れていたか!でも、文章力の拙さが目立つ

ファンタジーノベル大賞は、普通のライトノベル系ファンタジーでは狙えない賞として知られていますが、これはちょっとライトノベルより。いや、ラノベを引き合いに出すのは大げさか。ほとんど、世捨て人の様に暮らしている19歳の綾乃と86歳のオジャーガンマーの友情潭と、いかに綾乃がユタ(巫女)になったかを描く物語。ファンタジーノベル大賞の中でラノベ寄りということで、全然ラノベではありません。
ユーモアやキャラクターは卓越されていますし、ちょっと感動系のラストといい、作品としては言うことなし。ただ、構成力と文章力にはちょっと怪しい所があるので、ここさえ矯正すればいい作家になれるんじゃないかって、思いますね。ファンタジーノベル大賞はいい作品があるながら、リーダビリティの低さが欠点といわれますが、これはリーダビリティは高いと思います。
さて、次は佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』でも挑戦しますか。

「アルキメデスは手を汚さない」 小峰元

江戸川乱歩賞第19回受賞作。『テロリストのパラソル』に抜かれるまでは、歴代江戸川乱歩賞受賞作の中では売上高はダントツ一位だったらしい。
『高層の死角』とか『猫は知っていた』とか『放課後』を差し置いて?ということでしょうか。

青春ミステリの傑作だが、少々ルーティン的。古いせいか

青春ミステリだか学園ミステリだかの私的マイベスト3を上げさせてもらうなら、若竹七海『スクランブル』恩田陸『麦の海に沈む果実』佐藤友哉『エナメルを塗った魂の比重』を上げたい。『麦海〜』がミステリかはさておきだが。
そんな中で、青春ミステリの古典とも言える一作。ミステリに限らず青春小説はその時の文化云々が影響されやすいので、廃れやすいジャンルであるけれども、この小説は意外に現代でも通じるのでは?という内容でした。
もっとも、ミステリ的には大したこと無くて、現代の二時間ドラマをちょっと難しくした程度。ただ、Whydunit?が利いていたのが特徴か。ちなみに、この意味不明な題名、読めばわかります。
ちなみに、この本。現在は絶版なのかもしれませんが(ブックオフで100円で買ったのでわかりませんが)、現在、講談社文庫から江戸川乱歩全集を刊行しているので、読めると思いますが、2編が一緒になっているという欠点あり。

「やがて笛が鳴り、僕らの青春は終わる」 三田誠広

ミステリじゃなくて、普通の青春小説です。個人的に、三田誠広は好きなのでたまに読むんです。これは、現在絶版ですが、ブックオフで100円でした。
ブックオフに素晴らしい所は、絶版本を価値もわからず100円で売ってる事ですね(笑)。ちなみに、解説は何故か笠井潔です。坂口安吾『堕落論』についてダラダラと述べていました。

普通の青春小説。他の三田作品と似通っており、高い点は上げられない。

うちの現国教師曰く「プロジェクトXなんて、とんでもない番組ですよね。必ず、主人公の奥さんが癌で先に死にます」と。必ずかはともかく、確かに「奥さんに先立たれても、何とかは研究を続けた」系は多い。それと同じで、この作品にも他の三田作品と似通った所が多い。
三田誠広と言えば、僕らの世代だと、教科書にも採用されている『いちご同名』が思い出される。『春のソナタ』(冬じゃないです!)とか『僕って何』もこの系統ですが。
主人公(←しかも、内向的な奴)は素晴らしい才能を持っているのに、進路についてうじうじと悩む。隣にはさらに素晴らしい才能を持った友達(←主人公は少々シニカルな目で見つめる)がいて、しかしながら、その友達も主人公に微妙なコンプレックスを抱いていて…ラブストーリーをはさみながら(この展開だけは、毎回変わる)、主人公が進路を決めるみたいな…。
この作品自体は、個人的には好感度の高い小説ではありますが、『いちご同盟』や『春のソナタ』なんかを、読んだ後だとどうも上にあげたようなルーティン部分が目立ってしまう。だから、作品自体は低評価でしょうか。
「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂幸太郎

今話題の伊坂幸太郎。読んだのは『オーデュボンの祈り』に続いて、二作目。まだ、『重力ピエロ』読んでない…。ちなみに、ブックオフで500円でした。さらに、どうでもいいことを言うと、エンタメ界の登竜門・吉川英治文学新人賞受賞作。

で、肝心の感想ですが、
面白いけど…何か、キャラクターが醒めすぎ

そう、主人公がやけに醒めていて、口や行動では凄い事を言ってるのに、余りにも醒めすぎていると言うか…、文体もそれに会わせるような文体だし。そういう点が、ついつい本多孝好を思い出してしまった。
やっぱり、村上春樹の影響でしょうか?
本多孝好も伊坂幸太郎も同じ1971年生まれ。『ノルウェイの森』が出たのが1987年だから、そんなもんなんでしょうかね…。って、今見たら、村上春樹って『ノルウェイの森』がデビュー作と思っていたら、違ったんですね…。
で、肝心な中身ですが、ミステリ的にも素晴らしい小説。2つのシーンを交互に織り交ぜながら、最後で種明かしというメタミステリとしては普通の手段ながら、最後に爽やかなカタルシス(←意味不明だぞ、この表現)があるというストーリー。
普通の本好きにも、ミステリファンにも読んで欲しいですね。

「改訂完全訂版 異邦の騎士」 島田荘司

「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」と並ぶ、島田荘司の代表作。あまり、個人的には評価していない島田荘司なので、これ以後、島田荘司を読むことは多分、ないかと。ちなみに、これはブックオフで100円。

最後の手紙が感動的…でも、浅田次郎的?

いきなり、記憶喪失の男が出てきて右往左往するところから始まり、御手洗潔が出てきて云々というストーリー。
よく、この手の作品である安易な「自分探し」に走らないのが、素晴らしい。後半の展開は、スピーディかつ謎に満ちていて、ミステリ的にも小説的にも及第点を上げたい。
特に、この作品で注目したいのが結末部。御手洗潔の謎解きに始まり、手紙で終わる…この手紙はある意味通俗的(別名:浅田次郎的)ではあるけれども、御手洗の容赦ない(?)推理の後だと、それも余り感じられない。
浅田次郎のあざとさが嫌いな人にはオススメできないが、少々俗っぽくても、泣かせる系が好きな人にはオススメできるかもしれない。

『黄泉がえり』 梶尾真治

今週は、なんか色々ありこれ一冊しか読めな買ったんですが…
最後が感動のSF…でも、『四日間の奇蹟』よりは下か

最近、このタイプの本は多いですし(最後が結構感動的な奴)、現に今売れている(30万部〜50万部ぐらいに)作品はこのタイプが多いです。
舞台は熊本(福岡県人としては親近感はわきますが)なんだけど…、ちょっと舞台設定を生かしきれてない印象。同様のコンセプトの作品に、恩田陸『月の裏側』がありますが、これは掘割をキーに使ったことで、柳川と言う特殊性を活かしたイメージがあります。
ただ、ここからのSF展開はお見事。こう言う風に、解釈をつけるかー、という素晴らしい出来ですね。実はSFファンでもないので、ジャック・フィニィ『盗まれた街』は読んでないんですが、これより上では?
好感度のいい作品として、よく名前の上がる『四日間の奇蹟』には及ばないが、好感度のいい気持ちいいラストでしたね。
なんか、売れる理由もわかる…と言った感じでしょうか。

「漂流記1972」 三田誠広 

貴重な(?)絶版本。ブックオフで上下巻それぞれ100円でGET。
というわけで、感想。
面白いけど、面白いけど…これ、アクションコミックですか?
暴力シーン、官能シーン、殺害シーンなんでもありあり。
氾濫したら死刑だの云々かんぬん。作者がメタレベルを破壊しているし。
あとがき読んだら「日本赤軍」云々が元々らしいですけどね。
まあ、大変エンターテインメントとしても面白い作品なので、「バトロワ」読んでいる暇があったら是非ともこちらを。サバイバー小説としては、こちらが上では?勿論、手に入ればの、話ですけど。

「クビキリサイクル」 西尾維新

やっと、読んだぞ、キャラ萌え小説第23回メフィスト賞受賞作。
という戯言(←洒落?)はともかく、感想。
玖渚友キャラ濃すぎ!御手洗越えてます。
全然、タイトルにならん、タイトルですな(ちなみに、ボールドの所は、書評のタイトルって意味です)。
大体さあ、日本人なのに髪がハワイアンブルーって、どういうこと?「僕様ちゃん」って、一人称すさまじいし!「うにー」と「あうー」しか言ってないし (いーちゃんは「あう。」(c豊崎由美)しか言ってないけどさ)。それに、漢字読めないし!(未読の方へ:玖渚友は「くなぎさ・とも」と読みます。性別は ♀です。ちなみに、いーちゃんは♂です)
で、ミステリ的には、大した事はない…と思っていたら、最後に麻耶雄嵩並み(以上?)の論理飛躍を見せるという…ちょっと、ハイテンポ過ぎてついていけませんでした…。

「一の悲劇」 法月綸太郎

ハードボイルド…にみせかけて本格のどんでん返し

でもねー、僕根本的にハードボイルド駄目なんですよ、実は。
孤高の中年男になんか全く惹かれないんですよ、はい。
だから今後とも、チャンドラーもロス・マクもハメットも読む気なし(原りょうは読んだけどさ…)。
だから、今回ラストに本格並みのどんでん返しが来ても、なんか興醒め。
ちょっと、この作品のよさはわからなかったです。

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『スペース』 加納朋子 東京創元社

ご存知「駒子シリーズ」第三弾(「駒子シリーズ」については2日の日記参照のこと)。
ここは、勿論いい感想を書きたいんでけどー・・・小言を2、3個。
まず、第一。
・文章変わりすぎ!
一作ごとに作風を変える作家もいるぐらいなのに、10年たてば全く別人。比喩表現も、当時に(当時は凄かった、どっちの意味でも)無理にあわせようとしているのが見え見え。加納さん、きつすぎです。
・日常ミステリなのにミステリ色強すぎ!
全くこの一言に尽きます。この手のトリックは作品雰囲気を壊すのでは?と思いますね。

と、小言を言った後は普通の読了報告と。
「スペース」と「バック・スペース」の一つの中編からなる物語(ある意味長編です)。一つの物事を両面からみるという趣向としては普通のミステリ。
どっちかというと(最後はともかく)、ラブストーリーとして読んで方が楽しめるのではないでしょうか。読者(作者も?)が長年、見てきた駒子がいよい飛び立つ物語ともとれます、「円紫さんと私」シリーズの『朝霧』みたいな…。
ともかく、読者次第で色々とこの作品の位置付けは変わるとは思いますが…。

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